軍神・ディクセンがアリスの突破に眼を見開く。その視界の中でアリスの刀が閃いた。


『貴様、やるな』


皇帝はアリスの腕を掴み、動きを封じる。アリスは掴まれた腕を空に掲げられ、吊るされた形になる。


『放しなさい』


鋭い眼光で腕を掴む男を睨み付ける。


ディクセンは一瞬クリスの様な優しい笑みを見せる。


『麗しいな』


眼を細めてアリスを見る軍神の表情が慈愛に満ちる。


黙って空いた手でアリスの顎に指を当て、唇を近付けるディクセン。


『妃にしてやろう』


その言葉に反応したアリスが眼を大きく開いて、太刀を即座に手放して平手を軍神の頬にぶつけた。


『な…!』


魔女2人と闘っていた将軍ジェン・リンドが、その瞬間を見て闘いの手を止める。そしてアリスが口を開く。


『私はクリス・ヴァンガードしか
 愛する気は無いの
 私は貴方の物ではないわ』


ディクセンは眼を丸くしてから、ヴァンガードの名に一瞬の嫌悪をあらわにした。