クリスの隣で膝をつきながら、衝撃の名前を耳にしたアルが細い眼を大きく開く。


『まさか…!!
 アリスによって軍神の魂は
 切り離された筈では??』


アルの頬に冷汗が流れる。


『アル!!!
 クリスの心臓が止まってるよ!!』


シュバルツの言葉に現実に戻される。


『…ルーンによる時間停止を
 試みます!!シュバルツ!!
 此処は断固死守ですよ』


アルが高速で印を結んでいく。


冷静に、超速で正確に印を結ぶ一方で、内心は相当な焦りがあった。


1900年前に死んだはずの軍神の復活は、始まったばかりの大戦を急速に終結させる可能性がある…しかもそれはヨーツンヘイム王室にとって一番最悪の結末となる筈だ。


最後の、手を合わせる印を結んで静かにアルは呪を唱える。詠唱の終わりと同時にクリスを光が包み込んだ。


このルーンにより、相当な体力を消費したアルは、一瞬意識が途切れそうになる。


『アル!!!!』


丁度そのタイミングを見計らったかの様に、ジェンの周りで大人しく立ち尽くしていた暗殺部隊が襲い掛かってきた。


『くっ!!!』


シュバルツの叫びで気付いたアルは簡易な印を結ぶ。瞬時に暗殺部隊の足元から大きな火柱が立った。


『シュバルツ、此処は頼みます』


アルは背を向けたままシュバルツに話し、両手に雷を纏って戦闘体勢を整えた。