『君は闇に感応しやすいからね』


ジェンが微笑む。


無意識のうち、右脚を踏み込み、右手で握られた氷影を振り下ろした。


イデアの森の音が急に途切れた……。


二人に動きはない。


それが永遠に続くかと思われた瞬間、空気が割れて轟音が鳴り響いた。


『音断<オトタチ>…東洋の奥義か』


敵将の首筋に剣線をなぞる様に浅い傷跡が残る。


いつもなら太刀を繰り出しても平常心を保てるのに、息を切らしている自分が怖くなった。


『…君を呼んだのは
 君の中の闇を頂くためだ』


『…な…何をほざく
 俺の闇はもう消えた
 レナに案内されて…アリスに!!』


ジェンは溜息をついた。


『…そうか君はめでたいな
 全部話してあげよう
 レナ・ディクセンは私の専属諜報員
 君は私の計画通りに動いた
 そして君は闇が浄化したと
 思っているが、実は違う
 あの時斬られた切り口は
 外界の闇を取り込む
 闇を加速させる術なんだ』


…言葉が出なかった。


一瞬でも信じた仲間が…スパイである事実が、どうしても信じられなかった。


『嘘だ』


そして信じた師とアリスの剣術が、最悪の結果をもたらしたことも。


『嘘だぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!』