船から降りた後、後悔の念がクリスを縛り付けた。


『これでいいんだ…』


自分に言い聞かせる様に呟いていると、身体の芯が熱くなって、涙が溢れ出した。


それでも前に進むしかない。


涙を流しながら歩き続けると、木々が開けて大神殿が姿を表した。


『やぁクリス君
 久しぶりだね』


葉巻を吸い、暗殺部隊を従わせて神殿の門に君臨する人物。


『望み通りに一人で来たぞ
 …ジェン・リンド!!!』


聖蓮祭の光景が鮮明に蘇る。


その瞬間に、クリスを中心にした闇の波動が旋風を起こして吹き荒れた。


『君は相変わらず短気だ
 落ち着いて話をしようよ』


頭を掻きながら歩み寄って来る。


『何故俺が来るとわかった』


『簡単だよ…盗聴器を仕掛けた
 ヨーツンヘイムはあまり機械に
 頼らないからね
 そういう心配はしない様だ』


微笑みながら近付く将軍に、空間から太刀・氷影の切っ先を向ける。


『世界は魔力に満ちている
 あえて無機質なものを
 使う必要はない』


将軍の言葉には憎しみしか沸いてこない。その度に身体の中で何かが渦巻いていた。


『まぁ最期には闇系譜で
 呼び掛けたじゃない』


身体の中で、何かが壊れた音がした。