中央大陸東部イデアの森の中に神殿は存在した。


“時の大神殿”と呼ばれる、巨大な建造物の外壁には損傷は無く、永い年月を経た事を告げるかのように植物が覆っていた。


聖ミミル湖神殿同様、いつ建てられたかも明らかではない。存在さえも、あまり人に知られざる地が、この大神殿だった。


見渡せば木の生い茂る空で、何かを感じた。始めは気のせいかと思っていた気配が、徐々に強く感じてくる。


『クリス?』


シュバルツが顔をしかめて心配した声を出す。口に出すか迷ったが、結局伝えることにした。


『…シュバルツ、お前は残れ』


『え?』


シュバルツが驚く。この言葉を伝えるだけなのに、口が重く感じた。


『どうしました、クリス?』


アルが目を細める。その眼は疑問で満たされていた。


『…お前らもだ』


仲間全員に告げる。レオンが煙草を咥えたまま視線を交わす。暫く何も話さないまま、言葉を視線に乗せていた。


レオンは一度目を伏せる。視線が外れた時、少し安心感を覚えた。


『クリスの言うとおりにしよう』


レオンの言葉に、シュバルツとゼフィが沈黙してから頷く。


『アル、アリス…
 隊長命令に従うんだ』


そう言ってレオンは計器の確認を再開した。


『うん』
『わかりました』


声に力なく、二人はレオンに返事した。