久々にヨーツンヘイムに帰るコトになった。郷愁の想いが意外にもあったらしく、クリスは少し嬉しくなった。


事情を仲間に話した後、議会に別れの挨拶を告げ、連合軍への物資支給の契約を交わした。


勿論、レオンが。


レオンに交渉を一任していたので、隣から口を出すのも気が引けた。


『クリスは怠け者だね』


シュバルツに怒られたが仕方がない。きっとシュバルツにもこの考えがわかる時が来るだろう。


そう祈って、ゴメン、とだけ謝った。


飛空挺は唸りをあげて弓状列島の空を舞う。


空に浮かぶ光が眩しくて欝陶しいと感じた。


『クリス?』


アリスが不安げに声をかける。


『どうした?』


雲を切りながら進む景色の中で呼び掛けに答える。


『今…闇の波動が…』


そう言いかけた。


クリスの左腕全てに闇が渦巻いているのが、光を司る者の瞳にはっきりと映った。


『…アリス?』


言葉を発する事を辞めたアリスを不思議に思い、クリスの顔が視界を埋める。


『ゴメン!
 何でもない…』


アリスは視線を外す。


クリス・ヴァンガードと言う人間が闇に染まっていくのを見る事が、何より恐かった。