「そう、なんだ……」


黙々と練習に励んでいた結城君が、こんな葛藤を抱えていたなんて、ちっとも知らなかった。


「龍平、いつも顔に出さないけど、ホントはすごく苦しかったかも」


泳ぐ前に会ったときも、いつも通りだった。
でもあの時、すごく緊張していたに違いない。


「茜」


それからすぐに泉が入ってきた。


「泉、来てくれたんだ」

「当たり前でしょ。これ」


泉が私に差し出したのは腰椎分離について詳しく書かれた資料。


「これ、どうしたの?」

「うちの近所に接骨院があって、お母さんがよく通ってるの。腰椎分離って知ってる?と聞いたら、そこから資料もらって来てくれた」

「ありがとう」


ネットで色々調べはしたけど、専門的な言葉を使ってあってわからないことも多い。