「結城君……」
次のターンをせず、止まってしまった。
そして彼は、水面を手で叩きつけた。
最後まで泳ぎ切ることができなかった悔しさは、きっと彼にしかわからないだろう。
でも、勝手に涙が流れていく。
滲む視界の向こう側に、プールから上がろうとするのに上がれない彼の姿。
結局、審判員数人が手伝って、彼を引っ張り上げると、その場に座り込み立ち上がることもできない。
どうしよう。
悪化、したの?
いてもたってもいられなくて立ち上がったけれど、私にできることなどなにひとつない。
もう一度座り直し彼の姿を見つめていると、担架が運ばれてきて、彼は会場から出ていった。
私が焦ったって仕方ないのに、体が震えてくる。
息をしているのも苦しくなり席を立つと、更衣室の出口に向かった。