だから後続がついてこられないような展開でも、積極的に飛ばしていく。
「結城君!」
途中はとても辛い競技だと聞く。
淡々とスピードを落とさずに泳ぎ続けるのは、簡単なようで難しい。
そして、何回折り返したのか、もうわからなくなってきたころ……。
「あっ」
結城君の泳ぎが突然変わった気がした。
遠目だから確信は持てない。
でも、スピードも落ちているような。
その次のターンはなんとかできたけれど、明らかに2位の選手との間隔が詰まりはじめた。
腰が、痛むんだ。
ほとんどキックを打たず泳いでいたけれど、足が全く止まったように見える。
それでも彼は手のかきだけで泳ぎ続ける。
「頑張って」
もうその頃になると祈りに近かった。
なんとか持ち直してほしい。
必死に目を凝らしながら祈り続けたけれど……。