周りの選手に比べると明らかに体が大きく出来上がっているのは、一流の証。


――用意、ピッ。


ザブンと選手が一斉に飛び込んでいよいよ始まった。

長水路という50メートルプールで行われている今日は、30回往復しなくてはならない。
数えているだけでも大変だ。


結城君は最初から頭ひとつリード。
きっと飛び込みの技術も優れているに違いない。


最初の50メートルをターンするときには体半分リードしてトップに立った。


「頑張れ!」


彼の耳に届くはずがないことはわかっているけれど、叫ばずにはいられない。


専門の種目ではないのに、圧倒的なスピードで、あっという間に200メートルを泳ぎ終わった。

彼が目指しているのは、この大会の優勝ではない。
いい記録を出して、さらに上位の大会にエントリーできる資格なのだ。