鳥羽・伏見での戦


山崎は、重症を負った


「すんまへん…副長…おおきに……」



山崎の最後の言葉だった

江戸へ向かう船上で、息を引き取った


山崎のそばで、土方は呆然と見続けた


「土方さん 失礼します」


体調を崩し、顔色の優れない沖田がにこっと笑って入ってきた


「僕は、山崎君みたいに嘘はつけません」


そう言って、山崎の懐から君菊の愛用していた簪を出した


「心の臓を病んでいたそうで、亡くなったのは、最後に土方さんと会った翌日です」


沖田の言葉が理解できなかった


「毎月 自分が生きていると土方さんに思ってほしくて、手紙を書きためたそうです
残りがあと三通
それが終わったら、言うつもりだったようです
簪だけでも土方さんのそばにって…
土方さんの中で生きていたくて…
山崎君に頭を下げて頼んだそうです」


「は?君菊が……」

「亡くなってます
本当……偶然なんですけど、山崎君が
部屋で簪握って泣いてて……
内緒にするって約束で教えて貰いました
すっごく綺麗な最後で、幸せそうに
笑ってたそうですよ」

「嘘だろ……」

「土方さん、この簪は貴方が持っているべきです
君菊は、貴方のそばにいたかったんですから
えーと、あった!はい!残りの手紙です!」