七月



将軍 徳川家茂が亡くなった




その翌月





琴が舞妓として、舞台に上がることが
決まった


世間を騒がす、君菊の禿が表舞台に立つ
とあって、大変な賑わいとなった



披露会の十日前




島田屋に頼まれて、料理をしに行った
君菊だったが、仕事が終わると
帰り際、突然しゃがみ込む


「どうした?君菊!!」




胸元を押さえ、顔色の悪さ

呼吸の仕方




島田屋は、亡くなった妹と同じ病ではと
すぐに、医者を呼んだ


「心の臓を病んでおられますな」



薬を飲み、布団に寝かされた君菊


「そうどすか… そんな気は、してました」


沖田と同じように言って、笑った



置屋に君菊が倒れたと知らせを出そうとしたが止められた



「島田屋はん、少し休ませて貰ったら
すぐに元気になります」



島田屋は、君菊に妹のことを話した



「君菊に妹を重ねていたんだよ
同じ病になるやなんて……」


「ふふっ あっ 堪忍……
島田屋はんが、うちを妹やて思ってくれてたやなんて、嬉しいなって!!
おおきに!お兄ちゃんが出来て嬉しい!」



そして、君菊は置屋に戻り、普段通りに
過ごした



(人を殺めた罪は、ちゃんと返ってくるんや
この罪は、きっちり償わんとな)



不思議と心が晴れやかだった



「与一はん
ちょっとお願いがあるんやけど」


病のことを聞き、願いを聞いた与一は
君菊を壁に押さえつけた


「……」



静かに涙を流した

言いたいことも言ってやりたいことも

山ほどあるけど


病が憎くて、悔しくて泣いた



「なんで、与一が泣くねん」




クスクスと君菊が笑って

与一をひっくり返す


「いでっ!!」


「仕返しや」 と言ってニヤリと笑った




与一は、君菊の願いを叶えることにした