壬生浪士組の宴会


島原にて





皆がほろ酔いになった頃




舞踊の披露が成された



土方と沖田が目を見開く



優雅に舞う女が、何時ぞやの女だったから



「君菊と申します
どうぞ ごゆるりとお過ごし下さいまし」



壬生浪士組 局長である芹沢と近藤に酌をして、土方の処へ来たときだった




「ここかぁ… みぼろの癖に酒何ぞのみおって!!」


男がひとり部屋に入ってきた


壬生浪士組 二十数名に一人で立ち向かってきたのだ


しかし、壬生浪士組は、客


刀を預け、丸腰


それでも、芹沢が腰をうかせ立とうとした


スッ



芹沢に右手を出し、立ち上がったのは

君菊


「琴はん、番頭はん、与一はんと、うちのかわりに深雪はんを呼んできておくれやす」

「はっ…はい!!!」


琴と呼ばれた、君菊の禿がバタバタと廊下を走る音が遠ざかる



「女に用はねぇ!のけ!!」

「一人で来たことは、誉めて差し上げます
せやけど、うちのお座敷で揉め事は
困りますえ」


君菊が右手を男に伸ばした途端

コテン


男がひっくり返る


!!!!!!



全員が驚く



君菊は涼しい顔で酒を男の口に流す

溺れるほど容赦なく



「あら?寝はったわ」



バタン


「君菊!!お前また!!」

勢いよく番頭が入ってきた


「番頭はん!!酔っぱらいが入って来て
暴れたんどす!!ちょっと突いたら
寝てしまいはって……堪忍」

「謹慎や!!!」

「へぇ わかってます」


与一という男が酔いつぶれた男を

抱えて行き


君菊の代わりに深雪太夫が来た


「番頭!!君菊は、悪くねぇ!!」


土方が番頭に声を掛けたが


「悪くなくても、客に手荒な真似はあかん
しきたりや!!口挟まんといて下さい!」


「ほな また」


君菊は、土方に少しだけ微笑み

出て行った







翌日





土方の部屋で、沖田がくつろぎ

ポツリと本音をこぼした



「僕たちの為に君菊が、謹慎なんて
申し訳ないですねぇ」

「これで、助けられたのは、3度目だ」

「君菊って、不思議な女ですね」

「そうだな……」