「閉じこもるより、まずは
ちゃんとこんなふうに、思ってることを
言って、相手の気持ちもきかんとな!」







自室にひとりになってから、深雪太夫に言われた言葉を思い出す


(そんな勇気ないわ…
土方はんにまで、裏切られたら立ち直れん
敵やって、嫌いになれたら
どんなにええか…

せやけど…二人とも、幸せそうやったな

うじうじして、あかん!!

強くならなあかんな!!)



君菊は、忍服に着替えた

久しぶりに、夜の散歩でもしようと

外に出る



すると



大きな荷車が何台も、ある一軒の店に

入っていく


(こんな夜に?)


気になり、店に近づく


(火薬の臭い
あの箱の大きさからして、銃やな)


暗闇に目をこらす


(あっ宮部はん…)


店の男と話をしていた男が長州なまりを話す客だった


(報せなきゃ!!)



新選組の屯所を目指し、忍び込む


(えと、近藤はんの部屋は確か…ここ)


まだ、灯りのある部屋に声をかける


「夜分にすみません…君菊です」

スパーン

(えええええ…
土方はん…
土方はんを避けて近藤はんとこに来たのに
最悪や…)

「君菊!!この前は、誤解していたとはいえ
乱暴にして、すまなかった!!
本当に、悪かったと反省している」

思いがけない土方の言動に、ぽっかりと
口が開く


(あかん… 報告にきたんやった)


「土方はん、その話は、またにして下さい」


(そうや!そうや!
近藤はんの前ですることやないわ!!)


「長州なまりの客が、ある店に武器を運び込むのを見ました」

「どこの店だ」

「桝屋です」

「山崎に見張らせよう」

土方が近藤の部屋をバタバタと出て行った


「久しぶりだね」

「へぇ えと…そうどすねぇ」


急にモジモジして、真っ赤になる君菊を
クスクスと笑った


「具合は、良くなったのかい?」

「深雪と明里に助けられました」

「そうかい、良い友に恵まれたね」

「はい」

「しかし、女子がこのような夜にひとりで
出歩くのは、関心せんな!!」

「普通の女子とは、違い
屋根上を散歩してますから
ばったり会うのは、お兄ちゃんくらいです」

「その油断は、いけないね
気をつけてくれないと、君が怪我でもしたら、歳は正気を失うぞ?」

「なんで?」

「そのうちわかるよ」


(そうなんや?)