新選組の宴会を断る為

島田屋と二人で飲むことが増えた



「君菊?飲み過ぎやないか?」

「酔いたい気分ですのや」


いつもより、たくさん酒を煽る君菊が
嘘笑いをした


「それくらいにしとき
そない、自分を虐めたらあかんで?
泣きたい時は、泣いたらええし
笑いたくないなら、無理せんでええ」


「……おおきに
島田屋はん…なんでかなぁ、苦しいんどす
うちは、どないして今まで、おったのか
わからんようになって、なんや
生きてるのか死んでんのかもわからへん」


「ちゃんと生きてるやないか
足もあるで?
ほっぺたかて、温かいで!」


君菊の頬をつまむ

へにゃっと笑い

「痛いどすえ」



少し元気になった君菊だった




















少し暖かくなった頃



徳川慶喜から、舞踊披露の依頼がきた

置屋の店主は、いよいよ婚礼の準備かと

浮ついた







新選組が警護をする中

披露会が行われた





前夜に山崎から、君菊の許婚が徳川慶喜であることを聞いた土方は、二人の様子を
気にした


行事が終わると、徳川慶喜は一目も憚らず
君菊のもとへ


君菊は、慶喜へ微笑んだ


嘘笑いではなく、ちゃんと笑った


二人が庭を散歩しながら、何を話しているのかわからなかったが



〝君菊の婚約は、破談になった〟



置屋の店主が、寝込み

この噂は、すぐに広まった




「仲むつまじくお話しされてましたのに」




店主の落ちこみようは、酷く

君菊は、番頭に


「うち、身を売って店に償います」


と、申し出た



もしも、婚礼となれば店に七百両が入っていた

しかし、慶喜から破談にしたことで
示談金として、二百両が店に渡された


君菊は、五百両を身を売って稼ぐと言い出したのだ


「また、馬鹿なことを!!!」

「買う人おらんやろか?」

「何を言っているのかわかってるんか!?」

「へえ わかってます」


店主と番頭が、金ではなく破談が問題だと
いくら言っても


「店に不利益もたらしましたから
うちが身を売ります」


一歩も譲らなかった



破談は、君菊が慶喜にお願いした

金子はいらないと言ったが

慶喜は、君菊の為に払いたいと

してくれた




「慶喜様に聞きました…」

「これで、帰れるやろ?今まで、おおきに」