「君菊…すまなかった…
俺は、なんてことを…」

頭を下げる与一の肩に手を置いた

「うち…
与一の事、信じてたんやで…
頼りにしてたんやで…
今まで、通り
うちの見張りしててくれたらええわ
二度と、うちに口づけとかせんといて
次は、うちも容赦せぇへん」


君菊の雰囲気が変わった

与一は、血の気が引くのがわかった

変わったと言うより、元に戻った



「しばらく仕事、休みます」




ひとつひとつの言葉に、感情がなく

冷たく



以前のように、嘘笑いすらしない



君菊への恋心から、新選組に嫉妬して

傷つけたのだと、気づいたが

与一は、君菊からの信頼の言葉が

過去形であったことに、犯した罪の重さを感じ、どう償えばいいのかと

目の前が真っ暗になり、体が震えた










傷が治るまで、稽古に参加しても

御座敷に上がることは拒み






ひとつきも、置屋に籠もりきりで仕事を休んだ







ひとつき、額の傷は塞がったが

君菊の心は、大きな傷と大きな悩みで


ボロボロになっていた







(もう、信じたりせえへん…
皆、敵なんやって、思ったらええ…)