私は、あの日を思い出して震えてしまった。


「階段…こわい?」

『階段から落ちて…歩けなくなったの……』


男の子はニカっと笑顔を見せて、


「ちょっと力をぬいてて?おひめさま」


『えっ。。。。』


私の体は中に浮いた。

お姫様抱っこされていた。


「顔………真っ赤だよ?それ反則……」


最後の方はよく聞き取れなかった。

男の子は階段を1歩ずつ上っていった。


「よし、ここに座ろう」


座った目の前に広がる景色はキレイだった。

自然と涙がこぼれ落ちていた。


「なあ、辛いんだろ?

俺が隣にいるから……泣いていいよ」


男の子は抱き締めてくれた……

それは私が忘れていた、人の温かさだった。


『ありがとう……』


どれくらいここにいただろう。

何も話さず、ただ手を繋いですわっていた。