私の車イスのタイヤが溝にハマってしまった。


『え、どうしよう』


タイヤを回そうとしても、まわらない。

だからと言って、立ち上がれても歩けない。


ケータイは………病室だ。




「大丈夫……ですか?」




そう声をかけてくれたのは、私が見つめていた男の子だった。


嬉しさと驚きと恥ずかしさで、何も言えなかった。


「車イス…動かすね」


そう言った男の子は溝から助けてくれた。



『あ、ありがとうございます』


「それはいいんだけど……何でさっき泣いてたの?」



えっ……見られてたの…………。

もしかして、私が見つめていたの気づかれてた………?



「今…時間あるかな?」


『う、うん』


「よっしゃ、俺のお気に入りのとこ連れてってやる」



そして車イスを、押しはじめた。