周りに人がいないことを確認して
ドアに手を伸ばす。

ガチャ


ドアを開ければ
途端に心地よい秋風が頬を撫でる。

ヒラヒラと風で揺られてきた落ち葉や
綺麗に紅葉した葉っぱが舞っている。

ここは好き。

落ち着く。

いつも座る
微妙な柵の位置まで移動し、腰を下ろす。
お弁当を取り出し膝の上に広げる。

もそもそと独りで昼食をとる。
いつもの事。


つまらない。
独りで食べるご飯は美味しくない。
独りでいるのが好きなわけでもない。

そう思うけど、
誰かと食べたい、
誰かと一緒にいたい、とは思わない。

あんなに愛想笑いと悪口を
繰り返す生活なんて
馬鹿馬鹿しくてやってられない。


だから独りになったんじゃないか。


それでも。




「つまんないなぁ…」





「じゃあ、俺と遊ばない?」



「…は?」




目の前に男の子がいる。
全然気がつかなかった。
だいたい、誰?この人。

「あの…誰ですか
あと、遊ぶとか…どういう…」
「ぶはっ!声ちっちゃ!聞こえねー!」
「は!?」

なにこいつ、ありえない。初対面で。
上履きの色から
多分、同じ二年なのはわかる。

でも見かけない顔。

まあ、私
だいたいの人は見覚えないけど。

「アハハッ…あーお腹いたいっ!くくっ」
「ちょっと…いつまで笑ってんの!」

イライラする。
もう無視しよ。
だいたい何で返事したんだろ。

お弁当をたたみ、その場から立ち上がる。
無言でドアの方へ向かう。



「あは、あれ?どこ行くの?
待ってよー暇なんでしょー












瀬戸口花乃さん」


足の動きがピタリと止まる。
今、こいつ私の名前呼んだ?
教えてないのに?

「ね、無視しないでよ、瀬戸口花乃さん」

やっぱりまちがえじゃない。

「何で名前知ってるの…」
「あー名前だっけ…俺、結城朝哉!」
「質問の答えになってないんだけど」

そう言うと、
なぜかニコッそいつはと笑った。


「一年ぶりだね、花乃」