キーンコーンカーンコーン


授業の終わりを告げるチャイムの音を
なんとなく聞き、
椅子から立ちあがり、礼。

わらわらと動き出した
クラスメイトをぼんやりと眺める。

次は昼食の時間だから
他のクラスに行ったり、
机をくっつけて
お弁当や購買のパンを取り出して
楽しそうにお喋りなんか始めてる。


居心地の悪さを感じて
ポケットに入れていたスマホを取りだし
ヘッドホンを着ける。

音楽なんてかけてないから
周りの声が
少し聞こえづらくなっただけ。

椅子から立ちあがり教室のドアへ向かう。

ふとヘッドホンの隙間から聞こえる。


「あいつ、またどこか行こうとしてる」
「いっつも独りでどこ行ってんだろ」
「知らなーい」

聞こえないように
話してるつもりなんだろうけど
あいにく私の耳には聞こえてる。

だからと言って、
何か反論するほど私もバカじゃない。

何も言わずに昼食を持ち教室から出る。
階段を上り、屋上のドアまで歩く。

私は、決まって屋上で昼食を食べる。
あそこには滅多に人が来ないから楽だ。

スマホをいじり、
さっきかけ忘れていた音楽をかけ始める。

誰が歌ってるのか忘れたけど
わざとらしいありきたりな
「頑張れ」「大丈夫」だとか
応援メッセージを投げかける歌詞に
無性にいらいらした。

「…何でかけたんだろう」

やっぱり音楽を止め、
ヘッドホンを雑音を塞ぐだけの
耳当てにする。


瀬戸口花乃、中学二年生。
いつからだか、
私には友達と呼べる存在がいない。