10分もしないうちに大智さんは戻ってきた
『修理ですか?』
「いや、大したことじゃないよ」
そう言って、イヤな顔一つせず
席に戻りパソコン作業を進める
大変ですね、
独り言を言ったつもりだったけど
聞こうてたらしい
「あれでも客だから」
えっ?と大智さんを見れば
何事も無かったかのように
仕事をしている
多分……聞き間違いではない
いつも、どんなお客さんに対しても
笑顔で紳士的な対応している
もちろん、私たちにもだ。
けど、大智さんは
今……毒を吐いた
私が勤めて3年、大智さんの下で
働いていたけど、今まで見たことも聞いたこともない…
驚いたけど……
あー、この人も血の通った人間なんだと
少し安心した
『ストレス、溜めないでくださいね』
大智さんにだけ
聞こえるように、ボソッと言い
いつも引き出しに常備してある
小さいチョコレートを大智さんの机に置き
私は指示書を持ち工場へ向かった