就業時間間近、一人のお客さんがきた


「こんにちはー、大智くんいるぅ?」



その人は、月に1回くる
生命保険のお姉さん……
大智さんのお知り合いらしい

短いスカートに胸元を強調するような服
咳き込みそうな香水の臭い
ギラギラ塗っているリップを見るたびに
私は気持ち悪くなる

あんなの塗ってご飯なんか食べられないし、絶対まずいだろう



「こんにちは、静香さん」


大智さんは特に気にせず対応する


「大智くん、なんかー、車の調子がわるいのぉー。どうしよう」



どう、調子悪いですか?


なんて聞きながら、外へ出て行く
本当にイヤでたまらない……この臭い



ケホッ、と数回咳をすれば
細川さんも同じだったらしく
無言で空気清浄機をマックスなした


その行動を見ていた私と目があう


「あれ、自分で気づかないのかしら?」


それだけ言って席へ戻る
御尤もな意見だ


細川さんは普段、あまり無駄話はしない
こちらが話しかけたら返ってくるだけ
それでも、的確な言葉が返ってくる

私はそんな細川さんが大好きだ