「なんか、吹けないんだよねー」



そう言ってアクセルをカラ踏みする
我が社のお客さんである新生建設の車
……の運転手の篠原さん


私に好意を寄せている人だ



『エア漏れですかね?ちょっと見てもらいますね』



そう伝え、大型専門の川田さんに声を掛けた


「診とく。調整くらいなら伝票切らなくていいよ。終わったら帰ってもらうね」


助かります、
この分は来月の車検代に入れよう


そう考えながら、篠原さんに声を掛けた


『川田さんが見てくれます、今日の分は必要ありませんので……』


そう言って、それでは、と離れようとすればガシッと腕を掴まれた


掴まれた瞬間、あの時の怖さが身体中に走ってしまった



「凛花ちゃん、今度飲みに行こう?」


『……え、いや、ごめんなさ、い』



その返事に篠原さんの顔つきが強張った
それが怖くて……離してっとも言えず
ただ、気持ち悪さが身体を駆け巡る



助けて……だれか……


そう思った時


「凛さんに気安く触ってほしくないな」


その言葉と同時に私は彼に包まれる
掴まれていた腕は、彼のおかげで離された