「だって、新しい人に任せたくない!それなら俺がやるし、車のことや客のこと知ってるのは俺らだし」
……確かに、御尤もだ
お客さんと話す機会が多い
車の相談もされるが、家族の話も聞く
家族も乗る車だ
そういうのを踏まえたら
やはり私達が中古販売業務をした方が絶対いいのはわかる
ただ……余裕がないのも事実
「……ま、あくまでも理想ね。これをすれば、凛さんの負担が半端ないし、万が一凛さんが辞めるーなんて言いだしたら、うちはお手上げだよ」
お手上げ……
その言葉に嬉しさがあった
少なくても、大智さんは
私という社員を必要としてくれている
もちろん、辞めるなんて考えていない
今まで幾つか仕事をしたが、今の仕事が一番楽しいし、やりがいがある
『とうぶん、辞めるつもりはないですよ』
私は立ち上がり、出来上がったビーフシチューを皿に盛った
まさか我が家で上司と私が作った夕食を食べるなんて、思いもよらなかった
こうやって、いつも色んな女の人の心に上手く入り込んでるんだろうな
そう思ったら、また再認識する
やっぱり、この人は……ない。