「……俺も手を合わせてもいい?」
そう言って、私に近寄る大智さん
すっかり忘れていた
『父も喜びます』
そう言って私はキッチンへ向かう
大智さんは父に手を合わせてくれた
やはり聞かれるかな?と思った
うん……聞かれた
「いつ?」
いつ亡くなったのか?ってことだ
『去年のお盆』
そう言うと、驚いた顔をしている
そうだよね、だって会社にも誰にも父が亡くなったなんて言っていない
年末も、私喪中ですから、とだけしか
伝えていなかった
「どうして何も言ってくれなかったんだ!?」
珍しく大智さんが怒っている
それが、なんか可笑しかった
『お盆でしたし、地元は田舎でしたから、身内だけで済ませましたから……』
そう話しながら玉ねぎを切る
「そう言う問題じゃないっ!」
怒鳴られた……
それで驚いたわけじゃない
大智さんが怒鳴った事に驚いた
『……すみません。けどあの時は……そうするしかなくて。何も考えられませんでした。……私の家族は父だけなので、全て私がやらなきゃいけなくて…』
大智さんの言いたいことはわかる
会社の体裁もあるだろう