やっとの思いで首を動かし……周囲を見渡そうとした。



でも、それよりも早く、あたしの耳元、左右時間差で声が聞こえた。



「バーカ。
あーや。
俺たちから逃げようなんて……。
100万年早いっつーの」



右耳から聞こえたのは……。



生意気そうなチャラっと軽くて派手な声。



「“一生、手放してなんかやんねー”
つったろ?」



左耳から聞えたのは……。



ものすごーくさわやかなクセに、有無を言わせない圧力に満ちたクールな声。