「売られたケンカは、買わなきゃだろ?」



羽海はニカッと笑って、髪をわしゃっと触った。



「んもー。
羽海は、短気なんだからっ」



ぷぅーっと頬を膨らます。



「なーにが、『売られたケンカは、買わなきゃだろ?』
なのよー」



「ハハッ。
ごめん、ごめん」



「ごめんじゃないよぉー。
羽海のせいで、西口くんと付き合わされたら、どうしてくれんのー?」



自分の家の玄関の前で足を止めて、あたしは羽海の顔を見上げて睨んだ。