ねえ
すみれ。

今目を閉じても
何も見えないし
何も感じない
真っ暗なの

でもね
あのときは確かに見えてたの

真っ赤に燃え上がる炎と
真っ青な蝶が………




あの日と同じ
雨の中

一人
目を閉じて
空を見上げてみたのに





ねぇ
すみれ

何も見えないよ?








「魅優!!早く家に入って!!
もうびしょ濡れじゃない……
せっかくの誕生日に風邪引いちゃっても知らないんだからね!」



「……わかったわよ」





母親のように
小うるさいこの子は
すみれ。
女にしてはめずらしく私に
親しみを持ってくれてる
たぶん友達。

その横で苦笑いを浮かべてるのが真生。
昔からのくされ縁のような男。
ちなみにすみれの恋人。






昔なら
そこにまだあなたもいた。
去年もほんとならそこにいるはずだった。

一緒に祝ってくれるはずだった。




兄さん。


「魅優」


そうやって
そこで
その声で
その調子で
呼んでほしかったのに。






ちょうど一年前。
兄さんは死んだ。




私を遺して。