「えっ、なんで……」

「いや、なんか、ムカついて」

「えっ!?な、なんで!?」

「今、俺に告られたときより嬉しそうじゃなかった?」

「そんなことない……」

「ふーん?」

「本当だよ。私、失恋する前提で恋をしたから……びっくりした……」

「……」


真夜中くんは、無言で私の手に文庫本を返してくれた。


「ありが――」


私がお礼を言い出したのと、真夜中くんが私の首の後ろに手を回したのは同時だった。

引き寄せられ、唇を塞がれ、言葉尻を奪われた。