…次の日、雪は自分が指定した昼一に、飛天旅館に足を運んだ。

「…すみません、白井と言う者なのですが、相馬社長と会う約束をしておりまして、取り次いでいただけますか?」

「…白井様ですね。社長から伺っております。少しお待ちください…社長、白井様が、お見えになりました。…はい、かしこまりました。…お待たせしました。この左の通路を一番奥まで進んでいただきますと、左手に社長室がありますので…生憎フロントが私しかおりませんので、ご案内出来かねます。申し訳ありません」

「…いいえ、ありがとうございます」

受付に会釈した雪は、言われた通りに進んでいく。すると、言われた場所に、社長室があった。

深呼吸を一つして、ノックすると、中から、電話の時と同じ声が聞こえてきた。

ゆっくりとドアを開けると、高級なスーツに身を包んだ男性が笑顔で迎えてくれた。

…雪は、相馬社長の顔を見て、固まった。

染められていないが、淡い茶色の髪。彫りの深い青い瞳、スラッとした長身。

…異国の容姿をしているが、どこか日本的なところもある。…ハーフだろうか?

「ようこそお越しくださいました。あぁ、私と雪さんは、初対面ですね…初めまして」

「…初めまし、て」

驚きを隠せない雪を見て、相馬はフッと笑う。

「こんな容姿で、さぞ驚かれたでしょう?」
「…ぇ、はい…」

「…正直な方だ」

そう言って相馬はまた笑った。