琉偉の言葉に、口を噤む。

「…急に実家に帰っただろ?その後から、白井さんの様子が違う」
「…そんな事ありません。琉偉さんの勘違い、です」

「・・・そうか?俺にはそうは思えない。…俺だけじゃない。マーも気にしてるくらいだから、明らかに今までと違うと思う」

「…本当に何でもありません」
「…俺には言いにくい事?」

「ですから何でもないと言ってるじゃないですか!」

・・・ちょっと怒り口調になってしまった雪は、ハッとして、俯いた。

「…ゴメン、怒らせるつもりはなかった」

琉偉は、前を向いたまま、謝罪する。雪はそっと顔を上げ、琉偉の横顔を見た。

・・・ホントは、相談したい。・・・でも、琉偉には、関係ない事だ。仕事の事ならまだしも、全くのプライベートなのだから言えない。

「怒ってしまってすみません」
「…いや、俺もしつこく聞きすぎた」

…車を走らせること十数分。車は、雪のアパートの前に着いた。

「ありがとうございました」
「…白井さん」

琉偉が、雪に声をかけた時だった。雪の携帯が鳴る。…着信は、知らない番号。

「…すみません、電話みたいで」

そう言うと、慌ただしく降りようとした、雪の手を、琉偉が止めた。

「…まだ、話しが終わってない。出来たら、ここで話して」

困った雪だったが、琉偉は手を離す気がなさそうだ。だから仕方なく車の中で、それに出た。

「もしもし」
『…白井雪さんの携帯ですか?…私、飛天旅館の相馬と申します』

…飛天旅館の相馬。…それは、飛天旅館の経営者の名前だった。

「飛天…旅館」

携帯を持つ手が、少し震えた。