長いこと、秘書業務から離れていた雪だったが、直ぐに勘を取り戻した。

旅館で、女将業務をしていたせいか、前よりも一段と細やかな気配りができるようになり、雪が帰った秘書室は、とても明るくなった。

明るくなったのは、秘書室だけではなかった。

社長室は、見違えた。

黒澤琉偉は、社員にとっては、怖い存在だった。

だがしかし、トゲトゲしさはなくなり、周りにも耳を傾けるようになった。

仕事ができる上に、人としても成長した黒澤琉偉には、もう怖いものなんてなかった。

社員たちも、黒澤社長を見る目が変わった。

朝も、昼も、夜も、四六時中、時間を共にする雪と琉偉。

雪は、別々に暮らした方が良いのでは?と、琉偉に提案したが、即却下された。

正式に付き合い出した上、同棲まで始めた二人。

そんな二人が、クリスマスを迎えようとしていた。

今年のクリスマスは、雪は、琉偉に、ネクタイとネクタイピンを用意した。

琉偉もまた、最高のクリスマスプレゼントを用意していた。