驚きと、嬉しさと、こんな高価なものもらって良いものかと、複雑な心境がグルグルと頭の中で回っていく。

…なかなか寝室から出てこない雪が気になって、琉偉が入ってきた。

「雪?…まだ着替えてないのか?気に入るものが無かった?」

琉偉の言葉に、慌てて首を降る。

「そんな事ありません。センスの良いものばかりで」
「じゃあ、どれでもいいから、着て良い」

「…こんなとこまでしていただいて、良いのでしょうか?」

困惑気味に言う雪を見て、琉偉はフッと笑う。

「俺がしたくて勝手にしたことだから、雪は気にせずに着てくれたらいい。それに、姉貴が嬉しそうにその服を選ぶ姿を思い出したら笑えるよ」

「…さつきさん?」

「妹に選んであげてる気分。今度は、二人で買い物したいって」

…その言葉は、本当に嬉しく思う。

雪もまた、さつきを本当の姉のように慕っているから。

「…ありがとうございます、大事に着させていただきます」

雪の言葉に、琉偉は微笑み頷いた。

…やっと着替えた雪を連れ、出社した。

秘書室に入るなり、麻美と真美が駆け寄ってきた。

「雪!」「雪さん!」

二人は、勢い良く雪に抱きつく。

「遊びに来たの?帰ってきたの?どっち?元気にしてたの?」

ふたりの質問攻めに雪はタジタジ。

そこに助け船を出したのは、課長だった。

「二人とも、白井さんが困ってますよ。もう、始業時間ですから、持ち場についてください。…おかえりなさい、白井さん」

あぁ、優しい課長だ。

雪は、そんな事を思いながら、笑顔で言った。

「ただいま戻りました。これからまた、よろしくお願い致します」

その言葉に、麻美と真美が喜んだのは、言うまでもない。