「はーやーて!
教えてー。」
「はいはい、どこ。」
颯はあれから普通で
いつも通り文句を言いつつ
数学を教えてくれている。
「由茉さー、数学苦手なの?」
「苦手っていうか嫌いかな。
体が拒否してる。
でも颯はわかりやすいから頑張れる。」
「ふーん。」
私はテストまで、溜まり場へ通い
みんなに勉強を教えてもらった。
「なんでみんなそんな頭いいの?」
「前もいったと思うけど、要領がいいだけ。
要点をまとめて覚えて、あとは頭の柔軟性。」
哉斗が答えた。
「それなりに授業も聞いてるしな。」
爽が言った。
「私も努力してるのになぁ。」
「勉強はね、みんな小1からの積み重ねだから。
由茉ちゃんは学校毎日通い初めて
まだ1年もたってないからやり方わからなくて
当然なの。ずっと勉強してこなかったやつもね。
そんな簡単に出来たらみんな頭いいでしょ。」
「…哉斗…それ慰めてるつもり?」
「全然だな。」
湊が答えた。
「えー!フォローのつもりだったのに!」
「気持ちは伝わったけどね…」
私は苦笑いしかできなかった。
それからテストも終わり、6月も下旬だ。
テストはギリギリ純に勝った。
「あー早く梅雨明けねーかなー」
そう嘆くのは純。
「夏が楽しみだね?」
私がそういうと
「海だな、海!
由茉の水着姿楽しみだなー!」
「颯。そういうこと軽々言わないで。」
全く…。
ってか胸に傷あるし…水着着れないよ…
「でも夏休みの前にまたテストだよね~。
テストばっかで嫌になる。」
「俺はテスト好きだけどな。」
私がうなだれていると颯がいった。
「なんで?」
「なんか自分のレベルがわかるじゃん。
自分のわかんないとことかさ。
自分に向き合えるから。」
と颯は言った。
「珍しく真面目だね。」
「俺だってたまには真面目だよ。」
「颯は女関係に向き合った方がいいと思う。」
私がそういうと
「そんなこと言ってると数学教えないけど。」
「うそうそ。」
はは、と私と颯は笑った。
最近平和だなぁ。
「由茉、帰る。」
「はいはーい!
みんなばいばい!」
そして私は湊と帰り
家の前でキスをする。
ふふ、安定した幸せだな~。
月日は流れ、今日から7月。
まだ梅雨は明けていないけど…
なんだかやっぱり元気になるのが夏。
「由茉」
「なに?」
朝食タイムに晴輝が話しかけてきた。
一輝さんは今週ずっと夜勤らしく、
さっき帰って来てすぐに寝た。
「今日夜飯いこう。」
「えー、晴輝とじゃバイクじゃん。」
「いや、歩き。」
「えー!もっとやだ!」
「もう決定事項。」
「なんでまた急に。」
「これ。春に福引きで当てた。」
それは焼き肉チェーン店食べ放題無料券
アルコールのみ放題付きだった。
「あーだから歩きね。
焼き肉か、まあいいけどね。
ってか彼女と行かないの?」
「それ期限が今日まで。
彼女は用事があるから由茉。」
「なるほど。
まあいいよ。今日はまっすぐ帰ってくる。」
「おう。」
「あ、湊きた。
いってきまーす。」
私は夜晴輝と約束をして家を出た。
そして資料室。
「…颯?また一段と元気ないね?」
「最近寝不足で…眠い…寝る。」
「いやいや、もうすぐ授業だけど?」
「サボる。」
そういって颯は寝てしまった。
「今日焼き肉いかね?」
突然湊が言い出した。
「へー、気が合うね。
今日晴輝も焼き肉誘ってきた。
だからごめん、今日は晴輝と行くんだ。」
「晴輝さんならしかたねーか。
じゃあ今日もみんなでラーメンだな。」
湊がそういうと
「えー!俺らだけで焼き肉いこうよ!」
颯が起きた。
「颯…寝てたんじゃなかったの?」
「焼き肉食いたい。」
「なにそれ。」
「また由茉のいるときな。」
湊が話を終えた。
そして放課後、私は湊に家まで送ってもらった。
「湊、ありがと。
今日行けなくてごめんね?」
そう話してると晴輝が家から出てきた。
「晴輝さん、お久しぶりです。」
会ったのは爽の元カノの時以来かなぁ。
「おう」
晴輝がいたら今日はキスなしか。
「じゃーね、湊。
また明日。」
「由茉。」
"ちゅっ"
湊が私にキスをした。
そして離れてすぐ
"バシッ"
「人の家の前でなにしてんだよ。
しかも俺の目の前で。」
晴輝が湊を叩いた。
「はは、すみません。
でもこれ日課なんで。
やらないと由茉寂しがるんですよ。」
「…湊変わったな。
前は死んだような目してたのに
ずいぶん明るくなったな。」
「由茉のおかげですね。
それじゃ俺帰りますね。
晴輝さん、また遊びに来てください。
失礼します。」
湊は頭を下げて帰っていった。
「由茉、早く着替えてこい。」
「はーい。」
私は部屋へ向かった。
私は着替えをして、少し化粧をして
リビングへ降りた。
「あ、一輝まだいたんだ?」
「あぁ、そろそろ行くけどな。
湊、晴輝の目の前でキスしたんだって?
あいつも度胸あるな。」
私は恥ずかしくてなにも言えなかった。
「じゃ、俺行ってくるわ。
晴輝とたくさん食ってこいよ。」
「うん、行ってらっしゃい。」
「行ってきます。」
一輝を見送ったあと私と晴輝も家を出た。
「晴輝と外歩くの初めてだねー。」
「そうだなー。
そもそもあんまり俺ら歩かないしな。」
「確かに。いつもバイクだね。」
そんな話をして15分くらいでお店についた。
「いらっしゃいませー!」
「二人。」
晴輝がそう言うとすぐに席に案内してくれた。
早くきてよかった~。
それにしても…
「あれ晴輝さんだよねー!」
「はじめてみたー!」
「かっこいー!」
ひそひそ言われておりますよ、兄さん…
一輝と出掛けても湊たちと出掛けても
こうやって言われるから慣れてるんだけどさ…
「晴輝ってモテるんだね。」
「はぁ?何を今さら。
そんなこと言ってんの由茉だけだぞ。」
「自分の兄を女からモテるなんて思わないし。」
「一輝のことは思ってんじゃん。」
「あぁ、そうだった。」
矛盾してるよ、私。
そして私たちは焼き肉をたっぷり食べて
お店を出た。
兄、晴輝はお酒を飲んだわりにはしっかりしてる。
「俺はふらふらしたりしねーけど
感情的にはなりやすいかも。」
なんてさっきいってた。
「夜風が気持ちいいな~。」
…晴輝じゃないみたいだ…。
感情的どころかなんだか優しい…。
「晴輝、優しいね。」
「俺はいつでも優しいけど?」
…一輝みたいだ…。
お店を出て数分、家まで10分くらいの距離の公園から
女の子の罵声?怒鳴り声?みたいなような、
怒った声が聞こえてきた。
「んー?なんだ?」
晴輝にも聞こえたようだった。
私は目を凝らしてよく見たら
女の子と言い合いをしているのは颯だった。