『にいちゃーーーーーん!』








暗い暗い、海の中。
3歳だった僕は、必死でもがいた。
だけど、もがけばもがくほど水面から遠ざかっていくようで、ただただ怖かった。








『蒼(そう)!今助けるぞ!』

聞こえてきたのは、2歳年上の兄、海(かい)の声だった。
海は身を乗り出して、僕に向かって手を伸ばす。

『にいちゃん!』

僕は、泣きながら海の手を握る。
海と僕は2歳しか変わらないくせに、海の方が断然力は強かったから、僕なんて軽がる持ち上がった。僕の意識ははっきりしていなかったけれど、近くにいた大人がすぐ駆け寄ってきたのを覚えてる。

そしてその直後のこと。
強い風が吹いて、それと同時に海の




“ウワッ”
って声が聞こえた。










その記憶を最後に僕は気を失ってしまい、目が覚めた時には、海はもう