「寂しいの?」
「……え、いやぁ……」
カタンと、恒がまた席に座る。ゆるりと首を傾げてこっちを向く。こういうこと言うから、好かれるんだよいろんな人に。他校の女子とかに。
物事にはどんなに小さなことでも必ず意味があるって、古文のなにかの文章に書いてあった。
地球上の、少なくともこの国では昔からそういう考え方をするんでしょう。それなら、今この時にはなんの意味が。
───チカチカ、目の前で光が弾けた気がした。
そうか、それじゃあ、今なのかもしれない。
「聞いてよ、恒」
何を考えてるかわからない、真っ黒の瞳がふたつこっちを向いた。色のない瞳。わたしのことどう思ってるかなんて、分からない。
きっとなんとも思ってない。けど。
本当の話。それと、3年間分の気持ち。
「わたしね、ほんとうは、火星人なんだ」