クリスマスに隣に恒がいる、なんて、浮かれてる時期でもそんな性格でもないのだけれど。
「……ラインありがとう」
「うん。あいつらが碧も呼べって」
「そっか」
「勉強邪魔してたらごめん」
邪魔だったら来ないし。無視しますし。ていうか自分でどうせヒマでしょとか言ってたよね。それも誰かが言ったのかな。どうせ碧ヒマだろうから呼ぼうよって。
ヒーターの近くにいるからか耳が熱い。
「うわ雪じゃん」
「気付かなかったの?」
「ずっとここにいたからね」
恒が窓の外に目を向けて眉間にしわを寄せた。
夜空色の髪に真っ黒な学ランにグレーのカーデに青いマフラー。恒は寒がりだ。雪を見てまた寒くなったのかもしれない。
「熱いコーヒー買ってくる」
席を立とうとする。すぐいなくなる。また行っちゃうのか。つかめなくていつも逃がしてしまう。
自販機のある廊下は、ここよりもっと寒いだろうに。
「……ん、どうした」
いってらっしゃい、って口を動かそうとしたとき。わたしの右手が、学ランの裾を。
「……あれ」
どうした、んでしょうか。
身体が勝手に、ってもしかしてこれのことでしょうか。本当にこんなことあるんだ。人間の不思議ってまさにこれのこと。