「いつもよりぼーっとしてんね」



ブランケットを肩からぶら下げて窓際の席に体育座りをしながら窓の外を見ていたわたしにチョコの袋を突き出しながら。

恒が横に椅子をひっぱってきて座った。



「いつももぼーっとしてるみたいな言い方やめて」

「してるじゃん」

「心外だ」



いつも色々考えてるっていうのに。

だいたい恒のほうがぼーっとしてる。してるように見える。何か考えてるのかもしれないけど。心の奥が、どうしたってわたしには読めないからなあ。



「嘘。いろんなこと考えてるんでしょ、本当は」

「え」

「あれ、違うんだ」

「ち、がうく、ない」



慌てて首をぶんぶん横に振る。こうやって急に突いてくるところとかがあるから、余計分からないんだ。この人は。



「ココアこぼしそうで怖いからそこ置いて」

「とことん子供扱いするよね」



導かれるままに持っていた缶ココアを横のロッカーの上に置いた。積み重なった誰かのプリントと辞書と参考書の隙間に。ここもこぼしたらまずいけど。