「……綺麗すぎて、泣きそう」
みんなが言った台詞と同じ。だったのに、いつも心の底が分からない恒が零すと、なんだか違う響きに聴こえた。
特別だった。
泣きそうになんて、なるんだ。この人も。
いつまでも空に魅とれる横顔を微かに月が照らす。
暗いのにまぶしそうにまつげを揺らして口を結んで、瞳にうすく膜を張らせた横顔。
───その日
1年のころ同じクラスだっただけの、学力レベルが同じくらいだったからちょっと意識していただけの、あの人わたしに興味ないよなあってぼんやり思うくらいだっただけの、存在が。
星の墜落と共に音もなく。
わたしの胸に、突き刺さったのだ。
「……そうだね、きれいだね」
なんだか見ていられなくなってわたしも視線を夜空に移した。
こと座、はくちょう座、わし座。
アルタイル、デネブ、ベガ。
夏の大三角。
天の川だってそこにある。
みんな味方だった。わたしの味方。
だから、言っちゃえばよかったんだ。恋心と一緒に、ほんとはあの日、ぜんぶ。
わたしのぜんぶ。