「…っ」
視界の片隅で、ふわふわと揺れる黒髪
向かって、右側から、毎朝現れる君は、今日も今日とて、変わらずに。
こちらに一瞥もくれることなく、高校までの一本道を背を向けて漕ぐ。
「……寝グセ、すごいよ。」
ぼそっとそんなことをつぶやいて。
ぴょこんぴょこんと、風に吹かれて動くそれを静かに見つめる。
毎朝毎朝、ふわふわの髪と、様々な寝グセ
髪色と同じ、ダークグレーの自転車に乗って。
「あぁ、悠介?」
流雨の控えめな声を耳に受けながら。
紺野…悠介
道の向こうに、とっくに姿を消した奴のことを、懲りずに私は想うんだ。