その時一人の女の子とすれ違った。


上履きの色で同じ学年だとわかる。


廊下は一本道で、絶対にさっきいじめていた子に会うことになる。


「ちょっと忘れ物したかも。取ってくるね。」


「そっかー。先行ってるね。」


少し気になった私はそのあとを追いかけた。


曲がり角から様子をうかがう。


やっぱりその子はいじめられていた子に会っていた。


「大丈夫?...斎藤さんたち?」


その子はハンカチを差し出し、涙を拭いてあげていた。


そのときなぜか苛立ちが募った。


私ができないことをその子がしたからだろうか。


その子はいじめていた子の肩を抱いて前から歩いてきた。


そりゃそっか。周りから見たら私だって立派な加害者だ。


すれ違うときにおもいっきり睨まれた。



私はその場からしばらく動けなかった。