「あ、ごめんなさい。考え事していて。」

と言いながら、手を差し出す。

(そんなの見りゃわかるわ。考え事くらいしてるって)

うちは、差し出してくれた手を掴んだ。

さすが男子。うちの力が、なくても持ち上がった。

「本当にごめんなさい。怪我してませんか?俺、真田竜(さなだりゅう)って言います。高1です。」

「もう大丈夫だから。怪我してないし。うち、春咲うらら。高1。同い年だね。タメにしない?」

「そうだね。DREAM学園の制服だよね?
俺、隣の晴嵐(せいらん)高校なんだよ。頭結構悪いけどね。」

「そうだよ。良いじゃん。うちは、普通の高校に、行きたかったの。アイドルやモデルになんかなりたくないのに。親に言われたからしぶしぶ。」

「DREAM学園って結構頭いいよね。」

「そうなの?入るのちょう簡単だったよ。小さい頃に、高校の勉強まで終わらせたからかな?」

「ヤバ。小さい頃に高校の勉強なんて出来てたの?俺におしえてくんない?」

「別にいいけど。」

「よし。決まり。メアド教えて。」

「URARA0215@avex.kp.or.」

「オッケー。ねぇ、もしかしてだけど、春咲さんって、春咲カンパニーのご令嬢じゃない?」

「そうだけど………どうしたの?」

「うそ。ご無礼を申し訳ありませんでした。」

「そんな大げさな。うちがいいって言ってるんだからタメ語にして!今までこんなことがあったから言うの嫌だったのよ。」

「うん。わかった。じゃ。あとで教えてね。バイバイ。」

あまりの変わりようにびっくりするうちだった。

この嵐のような人を、うちが不幸にしてしまうなんて思いもよらなかった。