「ねぇ、聞いてる?人の話。」

「あ、うんうん。」

「じゃあ、うち、今なんて言った?」

「ごめんなさい。聞いてませんでした。」

「大丈夫?樹音(じゅね)。あの日からじゃない?」

河野樹音は今、中3の私の名前。私にも名前…あったんだ。
私と話しているのは、唯一の親友。火野恋香(ひのれんか)。同じく中3。恋香は名前どおりに、恋の甘い匂いがする。モデルを目指す女の子。正直、モテる。

私には、なんの取り柄もない。将来なりたいことも決まっていない。恋香とは、正反対。

あの頃から仲良くなった。あの出来事から。