おじいちゃんは日に日に弱っていった。




今じゃ起き上がることさえできない。



排便・排尿はすべてチューブ。

黄色い液体が管の中心でたまっている。



看護師が何度も病室を出たり入ったりする。

そのたびに部屋には痛々しい音が響き渡った。










ふと、おじいちゃんはこんなんだっただろうかと思う。







数年前、まだ入院なんてしないで歩いていた頃。



おじいちゃんは酸素ボンベを引いて歩いていたが、まぎれもなく『動いて』いた。



弟がよくおじいちゃんの息切れの仕方が独特だといって真似していたっけ。





株がどうだの不動産がどうだの、小難しい話をよくママにしては喧嘩していた。











でも今はしない。



病室での大喧嘩もない。











ママが言った。


「お父さん、すっかり大人しくなっちゃって。前はもっと静かで聞き分けがよくなってほしいなんて思ったけど、いざそうされるとなんだか複雑ね。」


ママは少し笑った。

そしてまたおじいちゃんの世話をせかせかと始めた。





私はそんなママをただ部屋の隅で立ってみていたが


なんとなく


近くにあったお湯で洗われた温かいタオルで

おじいちゃんの顔をふいてやった。