窓の外はすっかり暗くなった。
夜は冷え込むだろう。
私はおじいちゃんを一目してから、カーテンをさっと閉めた。そしておじいちゃんの乱れた布団を直した。
おじいちゃんが私をじっと見る。
目がとろんとしている。
気付かなかったが、なんだか苦しそうだ。
私はおじいちゃんの額に手を当てた。
かなりの高熱がある。
大変だ、冷やさなくちゃ!
私はすぐに冷水でタオルを洗い、おじいちゃんの額の上に乗せた。
けれども熱が高すぎるせいなのか、すぐにタオルは温まってしまう。
何度も何度も洗面台とベッドを往復する。
冷やしても冷やしてもタオルは温まってしまう。氷枕をタオルでくるみ、おじいちゃんの頭の下にいれる。枕はすぐに溶け、柔らかくなる。
こんなに熱が出てはさぞや苦しいことだろう。
どうしよう、どうすればいいのかな。少しでも楽になることをしてあげたい。
私は冷水で冷たくなった自分の手を見た。
「あ、そうだ、私の手だ。」
私はタオルを机の上に置き、両手をおじいちゃんの額の上に乗せた。
すると、どうであろうか。
おじいちゃんはとても気持ちよさそうな顔をした。
私はほっとした。
よかった。
私は手が温まっては冷水につけて、おじいちゃんの額に手を置いた。
気持ちよさそうなおじいちゃんを見るのが、無性に嬉しかったのだ。
私の手に触れられているおじいちゃんは、幸せそうだった。
おじいちゃんはまるで赤ちゃんに戻ったような顔つきをした。なんの邪念もない、ただ現在のささやかな快楽に、ふにゃっと表情を緩めている。