お兄ちゃんの一言に息をのむ。

「・・・知ってる。そんな精悍な顔つきの筋肉質でデカイ女の子いたらヤダよ。」

何でもない風に返して、そしてちょっと想像して、思わず眉間にしわが寄ってしまう。
あ、でもお化粧したら案外美人かも・・・?

お兄ちゃんはまた大きなため息をついた。

「そういう意味じゃねーよ・・・いくらオレのところだって、大事な一人娘がこうも頻繁に男の家に上がり込んでたら香奈恵さんだって心配するだろが?それ以上に・・・滉志さんがこえーよ・・・」

尻すぼみに声が小さくなるお兄ちゃんの言葉は全く予想外だった。
いつでも歓迎してくれていると思っていたから。

「えー?ママは『かずくんのとこなら安心♪』って言ってるよ?」

お兄ちゃんはそれこそ予想外だという顔をして、「香奈恵さん・・・」と頭を抱えた。

「滉志さん・・・は?」

パパの怒りを心配してか怯えた目であたしを見上げ、お兄ちゃんはパパの名前を再び口にした。

「え?パパ?パパは・・・何も言わない。」

あたしが目をそらしながら答えると、お兄ちゃんはため息をついて更に深く頭を抱える。

実際の所。
パパは黙認って感じ。ときどきお兄ちゃんの様子を聞いてくるけど、それ以上は何も言わないから。

「滉志さん・・・こえー・・・」

「大丈夫よ!毎日来てるわけじゃないし、泊まってるわけじゃないし、帰りはお兄ちゃん送ってくれるし・・・あ!だいたい、お兄ちゃんが悪いのよ!」

斜め上を見ながら思いつく限りの言い訳を考えていたあたしが突然声を張ったから、おにいちゃんはビクッと身体を起こしてあたしを見た。

「なっ・・・なんでオレ?」