起きる気配がなかったので、私は静かに病室を出た。
考え事をしながら歩いていると…。
ードンッ!
「っ!!!」
誰かにぶつかったらしく私は後ろに倒れ、尻もちをついた。
「あ、すまん。前見てなかった。
大丈夫か?」
目の前には、顔が整いすぎている男がいた。
赤っぽい茶髪が静かに揺れ、私に手を出した。
私はコクコクと頷き、その手を取った。
「怪我は…してないみたいだな」
イケメン君が少し微笑み、私の顔は真っ赤になった。
まぁ、前髪で見えてないだろうけど…。
私は急いでスマホを取り出し文字を打った。
『すいませんでした。それと、ありがとうございます!』
それを彼に見せた。
「あ、別にいいって俺の不注意だし!」
私は続けて文字を打つ。
『私、下向いて歩いてたから、きづかなくて、私の不注意です。』
考え事をして歩いてた私の不注意だと思う。
病院にいるって事は怪我してるかもしれないのにっ!
「あっ…」
私は咄嗟に口を押さえた。
手の甲が少し赤くなっているのが見え、驚いて声が出てしまった。
私は喋ってはいけないのに…。