「雨宮、お願いだ。俺はお前の力がほしい」



さっきのふざけた様子とは打って変わって真剣に私にお願いをする若宮 四季。


……だけど、だけど。



「もし、お前が喧嘩することでなにかトラウマがあるなら無理にとは言わねえ。

だが、その代わり教えてほしい。
その、トラウマとやらを」



トラウマ……。

別に、トラウマってわけじゃない。


ただ、前の自分のように何も考えずに喧嘩をすると“また”失いそうで怖いんだ。



「私、は……」


私は? 私はなに?
なんて言おうとした?


喉までつっかかって出てこなかった言葉、『あの時の俺はもう死んだ』。

そう、死んだんだ。


もう、いまは、私なんだ。



「私は、……ごめんなさい。

喧嘩はできません。だけど、元々私は若宮 四季組だし、3年のとこに行くつもりはない。

それだけは知っておいて」