「じゃあ、私、まだトイレ行ってないから先に行っといて」
しのと紅羽の頭をひと撫でして私はその場を去った。
後ろから「あま〜! ありがとう〜!! 王子さまああ〜!!」って声は幻聴だと思いたい。
クスリ、と笑ってバカねと心の中でつぶやく。
まあ、そういうところが愛おしいんだけど。
もし、生まれ変わっても絶対に言わない淡い恋心。
鈍感なしのにはきっと気づかないだろう。
なんて、思っているといつのまにか目的地の旧美術室に辿り着いた。
旧美術室の扉の左右には男がふたりいて、私を見て目を見開いた。
「なんだよお前」
「私? 私は雨宮 楓よ。
若宮 四季としゃべりたいの、退いて」
そう言って軽々と避ける奴らじゃないとわかっている私は、
ふたりの男の鳩尾を殴ってすこしだけ気絶させた。
ごめんね、と心の中で謝りながらも旧美術室の扉を開けた。