「忍ちゃんって、喧嘩できるんだねえ?」



チャラ倉くんは膝に肘を乗せて前乗りになりながら私のほうをみて言った。


『喧嘩できるんだねえ?』ってことはさっきの一部始終見てたってこと?

くそッ… せっかく、可愛らしい乙女になろうと演じようとしてたのに!

まあ、私がどう頑張っても可愛らしい乙女になれるわけないけどね。



「ほんのすこしだけね」



ブレザーのポケットの中に入っているくしを取り、お団子にくくり直しながら答える。


空手とか格闘技を無理やりお父さんに習わされてた私だけどいまはほんのちょっぴりお父さんに感謝。

お父さんのおかげであなたの娘はこんなたくましい女になりましたよ〜



「へえ、そう?

たぶん俺、忍ちゃんに負けるかも」


「しのでいいよ。

てか、私がチャラ倉くんに勝てるわけないじゃん?」


「…チャラ倉?」



……しまった

チャラ倉くんは私の心の中だけのあだ名だったのに思わずポロが出てしまった。


完成した頭のてっぺんにあるお団子から手を離して思わず私は口に手を当てる。